初心者はポルタを買え!-Ⅲ(望遠鏡を買う前に-番外編)

今回でポルタのインプレ記事は最後です。
よろしくお付き合いください。

アイピース以外のアクセサリーについて
 次に付属アクセサリーの正立天頂プリズム。

実はこのアクセサリー、ビクセンもあまり本気で宣伝しているようには思えないし、他のインプレ記事を見ても採りあげられていないので、実物が来るまで良く分かっていなかったのですが、本当に正立像が見える直角型のプリズムでした。
屈折望遠鏡で天頂付近を見る場合、そのままでは首を不自然に曲げなければならず辛いため、昔から光路を接眼部で90度曲げる直角プリズム(または天頂ミラー)を使うのが一般的ですし、アクセサリーとして付属するのは当たり前でした。
しかし、直角プリズムにしても天頂ミラーにしても反射回数は1回なので、通常倒立像が当たり前の望遠鏡と組み合わせると、正立鏡像(上下はそのままで左右が反転して見える)が常識でした。天体を見る場合、精密な観測以外ではそれほど困らないのですが、昼間地上を見るとすごく違和感があって、個人的には昼間使いたくないアクセサリーでした。
ところが、ポルタに付いてきたこの「天頂正立プリズム」は光路を90度曲げながら(左右が反転しない)正立像を作るタイプのプリズムが採用されていて、昼間のバードウォッチングなどにもすこぶる具合のよいものです。
過去を知らない人から見ると当たり前のことのようですが、標準の付属品としては画期的なことなのではないかと思います。カタログでは仕様欄にさらりと「正立天頂プリズム」と書いてあるだけですし、別売のアクセサリーとしても売られていないし、少し不思議です。もっと威張って昼夜兼用できる望遠鏡として宣伝しても良いと思うのですが・・・

次にファインダーについて少し・・・
  今回の「ポルタA80Mf」には6倍30mmの(このクラスにしてはやや非力ながら、)可もなく不可もない仕様のファインダーが付属しています。

ファインダー脚は充分に長く、のぞきやすいですし、調整もX-Y式でとても合わせやすくできています。さらに着脱が容易な上に再取付け時の再現性も非常に良いものです。着脱はアリミゾ式なので将来もっと大きなファインダーにも簡単にアップグレードできます。
初心者がつまずきやすい天体の導入をサポートするためのファインダーとしては充分な出来と思います。
さて、話はこれでおしまいにしても良いのですが、「ポルタA80Mf」の全体の出来が良いだけに、それ以外のポルタシリーズのファインダーが少し気になっていますので少し述べさせて頂きます。
まず「ポルタA80Mf」よりも高級な機種には「スポットファインダー」と言われる赤い点が浮かび上がるタイプの当倍ファインダーが付いています。ファインダーにあまり目を近づけなくても目標を捕らえることが出来ますし、流行みたいなもので格好よく見えます。しかしこの「スポットファインダー」、2等星以下の暗い星は見えませんし、倍率が低い(1倍)のでメインの望遠鏡が低倍率でないと視野に入れることが難しいしろものです。
昼間しか使わないとか、自動導入機で最初に明るい天体だけ導入できればよいのであればこれで良いのですが、暗い天体も導入しなければならない天体望遠鏡(しかも自動追尾が出来ない経緯台)にはナンセンスなアクセサリーと言わざるを得ません。
まさか初心者は月と明るい惑星だけ見ていればよいと言うわけではないと思いますので、急速な改善を希望します。
ついでにポルタシリーズの最廉価モデル「ポルタA70Lf」のファインダーについて・・・
「ポルタA70Lf」は市場実売価格が3万円を切る、私としては本当は一番お奨めしたい機種です。でも、私がこの機種をどうしてもお奨めできないのは、ファインダーの出来があまり良くないからです。
ファインダーの脚がきっちり固定しづらい、着脱で再現性が全くない、調整が3点式で難しいうえ調整幅も小さく、脚の固定のしかたによっては主鏡の中心とファインダーの中心を合わせることが出来ない場合があるなどなど、お奨めしづらい出来ばえなのです。
初心者がはじめに望遠鏡に接する時に、うまく使いこなせるようになるかどうかは、天体の導入がうまく出来るか、ピントがうまく合わせられるかという2つのハードルを越えられるかに掛かっているといつも思っています。(何がどこにあってどうやってみるかというソフトの面はまた別のハードルなのですが・・・)
架台にガタがなく、ファインダーと接眼部がしっかり出来ている望遠鏡なら間違いはないのですが、「ポルタA70Lf」の場合、他の部分の出来が非常に良いだけに残念でなりません。こちらもぜひ急速な改善をお願いしたいと思います。
なお、反射式の「ポルタR130Sf」は「ポルタA80Mf」と同じファインダーなので安心です。
少し長くなってしまいました。こういうことを書くと、また不快な思いをしたり、立場上困る人も出るのかも知れないのですが、ファインダーという部品がそれだけ重要な部品であること、ポルタシリーズがそれだけ初心者向け製品として期待されていることをご理解いただければと思います。
「ポルタA80Mf」のインプレのはずが大幅にずれてしまいました・・・

 アクセサリーといえるかどうかはわからないのですが、付属品の中には非常に丁寧に書かれた取扱説明書、紙製の星座早見盤、そして45ページものボリュームの「星空ガイドブック」という入門向けの本(定価1000円)が同梱されていました。

この「星空ガイドブック」という本、かなり良く出来たもので、勢いで望遠鏡を買ったものの、何がどこにあってどうやってみるか、どう見えるかなど、かいもく分からないといった初心者向けにすごく役立ちそうなものです。望遠鏡の「オマケ」としてはもったいないほどのものだとも思えるのですが、「ビクセン」が初心者のことを充分理解していることの証しでもあると思いますし、普及のためもっと積極的に本だけを販売して欲しいと思うほどです。
望遠鏡というのはパソコンに近い道具だと言う人がいます。曰く「パソコンだけでは何もしてくれない、ソフトを入れて、それを使いこなす知識や技量があって初めて役に立つ。」・・・ 大きな違いはパソコンの場合、それを使いこなすための教室が無数にあるのに、望遠鏡は無いに等しい状態にあるということです。もちろん仕事や生活に必須になっているパソコンとマイナーな趣味用の望遠鏡を比べることはできませんが・・・
望遠鏡の場合、人から教えてもらおうと思うと、望遠鏡ショップにしつこく通うか(もちろん嫌がられると思いますが)、地域で有志が運営している天文クラブに入るくらいしか方法がありません。ただ後者の場合、マニア=良い教師 でないことが多いので注意が必要です。
自分で勉強するのが一番だと思うのですが、初心者の場合、良い教科書を探すのがこれまたひと苦労になるわけです。望遠鏡とセットでこんなに良い教科書が付いてくるのはすばらしいことだと思います。
その分コストに反映しているといえばそうなのですが、初心者でなくてもそれなりに役に立つものだと思いますし、セットということで格安に入手できるものだと思います。

結論です
さて、3回にわたり「ポルタA80Mf」のインプレッションを掲載させて頂きました。
「ポルタA80Mf」がいかに初心者向け望遠鏡としての勘所をまじめに捉えて作られた望遠鏡であることがお解かりいただけたかと思います。
はじめに買う望遠鏡が実売4万円弱というのを高いと思われるかたは多いかもしれません。でもホームセンターなどで1万円~3万円ぐらいで売られている粗悪品を買ってしまい、良く見えないことに失望して押入れの肥やしを増やすだけならまだしも、宇宙や星に対する興味そのものを失ってしまうとしたら悲しいことです。
将来のアインシュタインやカールセーガン、はたまた毛利衛さんを失うことになってしまうかもしれません。(ちょっと大げさですかね・・・)
望遠鏡の場合、パソコンやデジカメや携帯などと違って、保管の仕方さえ間違わなければ一生使えるものです。古い物を大切に使っているのが尊敬される世界でもあります。また、性能に見合った適正な価格で売られていることが多く、定価に対して異常に安く(定価の半値以下で)売られているようなものは怪しいと思うべきです。ごく稀に本当に良い物が安く売られていることがあるかもしれませんが、良い物かどうか分からない初心者には勝ち目の無い「ばくち」になります。
「ポルタA80Mf」はこれなら間違いないといえるベストな選択といって間違いありません。
まさに「初心者はポルタを買え!」なのです。

「望遠鏡を買う前に」シリーズの番外編として書いているのですが、本編が終了する前に買うべき望遠鏡としての結論の一つが出てしまったので、本編を続行する気合が思い切り盛り下がっています。何とか夏休み前までには完結させたいと思っていますのでよろしくお願いします。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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初心者はポルタを買え!-Ⅲ(望遠鏡を買う前に-番外編) への5件のフィードバック

  1. 大沼 崇 のコメント:

    私の掲示板に、ガイドブックの事出てるよ〜との声があり、お邪魔させて頂きました。
    そのガイドブックの企画制作執筆をした大沼です。まだまだ未完成な部分もあり、非常に恥ずかしいですが次回改訂に向けて改善要望点などお知らせ頂ければと思います。
    どうか宜しくお願い申し上げます。

  2. スタパオーナー のコメント:

    執筆者直々のコメントを頂きありがとうございます。
    たいへんよくできた冊子で限られたボリュームの中で、初心者にはもってこいの資料と思っておりますので、ことあるごとに紹介させていただければと思っています。

  3. 天体望遠鏡で楽しむ 星空ガイドブック

    この冊子は、ビクセンが出荷するほぼ全ての望遠鏡に同梱されるガイドブックです。
    1年前の今頃、完成に向けて必死の作業を行なっていた事を思い出します。
    ビクセンが今迄のガイドブックを作りなおすとの情報を聞きつけ、突撃営業とプレゼンテーションを行ないました。
    そして、その後私がこのガイドブックの企画・制作・執筆を行なうことになりました。
    表紙の写真と扉の写真は藤井旭先生の撮影した写真で私が一番気に入っているものを選びました。巻頭言は大野裕明氏に依頼しました。完成迄約6ヶ月をかけました。星の手帖…..

  4. 大沼 崇 のコメント:

    トラックバックを貼りました。今後ともどうか宜しくお願いします。
    秋に成ったら、星を見にそちらへ宿泊を計画しております。その時は宜しくお願い申し上げます。

  5. スタパオーナー のコメント:

    大沼さん
    コメント&トラックバック、ありがとうございます。
    先日、このブログへのアクセスが急激に増えたので調べたところ、大沼さんの掲示板やブログでご紹介いただいたのが原因とわかりました。多くの方に訪問いただけてありがたく思っております。
    秋にご来訪いただけるとのこと、楽しみにお待ちしております。

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