今日も冬空。
この時期にしてはとても寒く、一度片付けかけた薪ストーブを再稼働
させています。
さてここしばらくあまり積極的に望遠鏡を増やしていなかったのですが
少し悪いくせがでて、ジャンクの古スコ(古い望遠鏡のこと)を何台か
ネットオークションで集めてしまいました。
細かくはいずれ紹介したいと思いますが、今日は一連の入手の中の
1台、「遊星号」の紹介です。
遊星号は古スコではなくスコープテックで今も販売されている製品です。
写真奥の長い筒が遊星号、手前の短いほうはここしばらく月の撮影用に
常用しているSHARP STAR50EDです。
「遊星号」とは何とも古めかしい名前ですが、口径50mm、焦点距離800mm
(F=16)というとても長い口径比のアクロマートで、古典的な設計を
踏襲しつつ最高の性能を得るための仕様なので、このネーミングに
なっているのだと思います。
「遊星」というのは最近あまり使われない言葉ですが、「惑星」の別の
呼び方です。
口径比16というのは特に高倍率に適したした仕様で、惑星観測に
向いているということもあるでしょう。
スタパでは可能な範囲でできるだけ毎日「月」の写真を撮影してブログに
掲載するようにしているのですが、月の全景を撮影するのに適した
望遠鏡として口径50mmを使用しています。
望遠鏡の性能は原理的には口径の大きさに比例するので、大きな
口径の望遠鏡を使用したほうが良さそうな気がするのですが、口径
の大きな望遠鏡は、大きな口を開けている分余計な空気の揺らぎも
拾ってしまうので、口径本来の性能を発揮することができないことが
多いのです。
多少大気の状態が悪い(気流が悪いとか、シーイングが悪いという
表現をすることもあります)時でも、口径が小さいと影響を受けに
くく、口径本来の性能が出しやすいという傾向があります。
このため大きな望遠鏡ではものすごく良く撮れる日もあれば、
小さな望遠鏡よりも写りが悪くなってしまうことがあって、毎日
撮影しているときにはその差が大きすぎて困ることが多いのです。
以前60mmと50mmの望遠鏡でシーイングが中程度の状態の時に月の
撮り比べをしたのですが、60mmの望遠鏡の画像は当たり外れが大きく
50mmより良く写っていたのは10コマに1コマくらいの割合しか
ありませんでした。
そんなわけで口径50mmの望遠鏡にこだわって月の写真を撮っている
のですが、遊星号の焦点距離(800mm)はここしばらくお気に入りの
カメラ(オリンパスOM-D E-M10)と組み合わせた時に、絶妙なサイズに
月が写ります。
フィルムカメラの時代の話で恐縮なのですが、35mmサイズのカメラで
月を撮ると、フィルム上の月の大きさはレンズの焦点距離の約100分
の1に写ることになっています。
例えば焦点距離1000mmならフィルム上では10mmになります。
35mmフィルムのサイズは35mm×24mmですから、焦点距離が2400mm
以上になると満月ははみ出てしまうことになります。
連続で月の全景を写すためには少し余白もほしいので、1500~
1800mmくらいの焦点距離が理想的な焦点距離といえます。
オリンパスのE-M10はm4/3規格のセンサーサーズでなので、遊星号の
焦点距離800mmは35mm判換算で倍の1600mmに相当するので、まさに
m4/3のカメラとの組み合わせでは、月撮影にはうってつけの望遠鏡
ということになります。
さてずいぶん前置きが長くなりましたが、昨晩の月を遊星号と
SHARP STAR50EDで撮り較べてみました。
まずは遊星号
OLYMPUS OM-D E-M10 +スコープテック遊星号(D=50mm/f=800mm)
2015.03.24 19h18m ISO200/ 1/10sec、トリミング後リサイズ、
トーンカーブ調整、アンシャープマスク処理
次にSHARP STAR50ED
OLYMPUS OM-D E-M10 +sharpstar50ED(D=50mm/f=330mm) 2xBarlow
2015.03.24 19h05m ISO200/ 1/15sec、トリミング後リサイズ、
トーンカーブ調整、アンシャープマスク処理
ほとんど違いがわからないかも知れませんが、よくよく見るとわずか
に遊星号が優っているように見えます。
まあ仮に互角としても、遊星号の価格は7179円、SHARP STAR50EDは
(すでに絶版品で現状新品購入はできませんが)39800円と5倍以上の
価格差があります。
製品としての高級感は圧倒的にSHARP STAR50EDが優りますが、コスト
パフォーマンスでは遊星号の圧勝といえます。
しばらくは月撮影用の望遠鏡として活躍してもらおうと思います。
ということで遊星号による今夜の月です。
昨日よりも少し太くなっていますね。
初めまして。小澤利晴と申します。
いつもオーナー様の星に対する素晴らしい情熱に脱帽しながら、サイトを楽しく拝見させていただいております。
今回は素晴らしい月の写真ですね。
ここでは同じ口径5cmの長焦点アクロマートと、短焦点EDで撮り比べていらっしゃいます。とても興味深い比較だと思います。
そこで、と言ってはなんですが、遊星號は5cmF16と言うかなりの長焦点で、分解能は口径の理論値にかなり近いと思われます。私は分解能を図る目安として眼視による二重星分離能力を最も評価しています。もし、機会がありましたら遊星號とED鏡筒で眼視の二重星対決をしていただけると嬉しいですが。勝手なお願い申し訳ありません。
小澤 さま
いつも拙ブログをご覧頂きまして誠にありがとうございます。
またとても有難いコメント&リクエストを頂き嬉しい限りです。
(こういったコメントは本当に励みになります。)
遊星号はm4/3センサーのカメラで月の直焦撮影を行うための究極の望遠鏡として購入したため、月の撮影結果を優先して掲載させて頂きました。
でも本当は肉眼で見てどちらがよく見えるかというのも確かに興味が湧くところですよねぇ・・・(笑)
スタパ周辺もようやく手袋無しで星見ができる気候になってきましたし、この先月齢も二重星向き(?)になりますので、機会を見つけいろいろ試してみようと思います。
こういった楽しいご提案は大歓迎ですので今後もどうぞよろしくお願い致します。
小澤 利晴です。
オーナー様、お忙しいところお返事をいただきありがとうございました。
遊星號は、昭和の香りのする今や数少ない望遠鏡と思います。
昭和40年代とか50年代には、このようなスペックの望遠鏡が色々なメーカーから数多く売られていました。ニコンや後藤光学、アストロやミザール、ビクセン、カートン……、いくらでも出てきます。
そこで遊星號のコスパの話ですが、これはオーナー様おっしゃるように物凄いものがあります。あの当時の同じようなスペックの望遠鏡の価格を今そのまま持ってきてもそれでも安いと思います。今の物価換算ではさらに差が出るでしょう。
うーん、素晴らしいです。
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