眼の話(星を見るのに役立つ) -その12-

スタパ周辺の水田では稲がたわわに実をつけて頭を垂れ始めています。

 

さて、今日も眼の話・・・ いよいよ今日が最終回です。

今日は天体観測に赤い光の懐中電灯を使うもう一つの理由についてです。

赤い光は桿体の視感度の低い部分の光であるため、桿体が明順応しにくいため
天体観測のときに都合がよいのですが、赤い光を使う理由はそれだけでは
ありません。

これまで錐体には赤・緑・青の3種類があることをお話していますが、
それぞれの数の比率については触れていませんでした。

それぞれの錐体の数の比率は赤:60%、緑:30%、青:10%ということに
なっています。

赤錐体が緑や青の錐体比べて極端に多いことがわかっています。

つまり錐体の数の多い色を使ったほうが少ない光で効率よく見るための
明るさが確保できるので、桿体の感度の低いことと合わせて、天体観測用の
灯りとしては赤い光が望ましいということになっています。

以上が赤い光を使う謎です・・・

なんだか、ちょっとあっけないですかね・・・ 

それでは錐体の数の比率が出たところで、うんちく話をもう一つ・・・

青の錐体が少ないと何だか青がよく見えないような気がしますが、
昨日もご覧いただいた各視細胞の感度曲線で青錐体の感度が他の錐体より
高いことを思い出していただくと良いと思います。

数が少ないぶん、感度の高さで補っているというわけです。

また、各視細胞の信号は脳に送られるまえに色情報に変換されるので、
この時に青錐体の信号にゲタを履かせるような画像処理をすれば、通常の
視作業で青錐体が少ないことの弊害はほとんどありません。

各錐体の数の比率は眼の進化を物語っているともいえます。

下等な哺乳類は色を見分けることができないと考えられています。

犬などは赤を見分けることができるが、それ以外はわからないという
話しもあります。

動物にとって赤というのはわりと大事な色であることから、進化の早い時期に
見分けることができるようになったのでしょう。

赤錐体は古くからあった視細胞なので、広い範囲の感度領域を持っていた
ということも説明が付きやすいと思います。

森に住んでいたといわれる人類の祖先たちにとって、緑も重要な色だった
のではないでしょうか?

やがて、より詳しく食べ物を選別するうえで認識できる色域を広げる必要性
の迫られ、青錐体が生まれたのではないでしょうか?

・・・などと私は妄想のように推測をしています。

いずれにしても、数の少なさや感度範囲の狭さから考えて、進化の最後の
過程で青錐体が生まれたと考えて間違いはないと思います。

さて、先ほど通常の視作業で青錐体の数が極端に少ないことによる弊害は
ほとんど無いと書いたのですが、相手が星のような点光源となると話しは
少し違ってきます。

 

図は各錐体の並びを模式的に示したものです。

星のような点光源が相手の場合、焦点像がなかなか青錐体に当たらないことが
予測されます。

普通の星は問題ないのですが、青い光の星は青錐体に光が当たらないと本来の
明るさより暗く見えがちになることが実際におこります。

通常の天体観察ではそれほど問題にはならないのですが、変光星の観測では
変光星の周囲にある星の明るさと比較して、現在の明るさを同定するので、
青い星が比較星になっているときには注意が必要であるといわれています。

まあ、非常にマニアック、かつレアな世界の話しではあると思いますが・・・

さて、12回にわたって(途中何日か間があきましたが・・)続いた「眼の話」、
難しいところも多くあって申し訳ありませんでしたが、今日で終わりです。

皆さんの星見ライフの(ほんのわずかでも)参考になれば幸いです。

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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