今朝は残念ながら悪天候・・・
23日間連続していた月の撮影がストップしてしまいました。
却って肩の荷が下りた気もしますが・・・
さて、今日はマニアネタです。
「筒内気流」という言葉をご存じでしょうか?
「筒内気流」というのは望遠鏡の筒の中で、望遠鏡が外気の気温に順応して行く
過程で、筒内で発生する空気の対流のことです。
12月3日の記事で望遠鏡の口径と気流について書きましたが、これは上空の
空気の安定度により見え方が変わり、望遠鏡の口径によっても気流の影響度が
変わるという話でした。
これは望遠鏡がよく外気温になじんでいる状態を前提にしています。
暖かい室内から(特に冬)外に持ち出したばかりの望遠鏡は、充分に冷える
まで望遠鏡の筒内で空気の対流が起こり、上空の気流の乱れと同じように
星像を悪化させます。
ただこの「筒内気流」、望遠鏡の形式によってもかなり変わります。
一般的には屈折望遠鏡は筒内気流の影響が少なく、反射望遠鏡は影響が
大きいと言われています。
構造的に、屈折は熱を蓄える大きな部品であるレンズが一番上に露出している
のに対し、反射系では反射鏡が一番下にあって、空気の対流を助長するという
ことが大きな理由と言われています。
でも実はこれ以外にもっと根本的に反射望遠鏡が筒内気流の影響を受けやすい
原理的な問題があります。
まずは下の図をご覧下さい。
図の左側は鏡に対して垂直に光が入射した場合です。
この場合、光は真反対に入射した方向に戻ります。
右側では、鏡に対して3度ずれた方向から光が入射して、垂直な線に対して
さらに3度ずれた方向に反射しています。
つまり入射角(3度)に対して倍の6度の方向に光りが反射されることに
なります。(いわゆる「光学テコ」です。)
鏡筒の中でいくら気流がひどくても3度も光路が曲げられてしまうことは
ありえませんが、0.0001°くらいは曲げられるかも知れません。
でも反射望遠鏡の中では少なくとも2回の反射がありますので、屈折なら
0.0001°で済んだ光路の乱れが0.0004°と4倍になるわけです。
さらに反射望遠鏡では光が筒内をニュートン式で1往復、シュミカセなどの
カセグレイン系では1往復半、行ったり来たりしますから光路の乱れの影響は
さらに大きくなることが予想されます。
シュミカセなどのカセグレイン系の望遠鏡の場合、さらに恐ろしいことが
起きます・・・
続く
一阿のことば 24
軍隊に対する考えもタシ算ヒキ算で行きたいものです。ところがどうでしょう今軍隊というと市民と称する人達は身震いするほど嫌います。
筒内気流の理屈わかっていたつもりが、こうやって説明いただくとなるほど思ってしまいます。いつものことながら、すばらしいです。続きがたのしみです。
シュミカセの温度順応が遅いので、エアーを送り込む器具を製作中です。その点でも個人的にホットな話題です。