超々入門 天体望遠鏡光学 倍率について考える - その5 -

今日も昼間はよい天気・・・緑が、空が目に浸みます・・・

 

なのに夜になると今日も曇・・・(涙)

さて、今日も「超々入門・・」の続きです。

前回は望遠鏡で口径(mm)の2倍を超える過剰倍率もときにはOKという話を
しました。

80mmくらいのアクロマートでF15といった長焦点の出来の良い望遠鏡だと
300倍くらいまでけっこう像が乱れず惑星などを楽しむ事ができます。

ただ、過剰倍率の世界に入ると像が暗くなる以外に、だんだん困ったことも
出てきます。

1.視界が極端に狭くなる

これは「組立望遠鏡」シリーズでもお話したのですが、望遠鏡というのは倍率を
上げれば上げるほど視界が狭くなります。

具体的にはアイピースをのぞいたときの見かけ視界(見えている円の範囲)と
いうのは、たとえば15倍なら見かけ視界の15分の1の範囲を拡大して
見ているということになります。

 

15倍というとたいした倍率でないと思いがちでですが、上の図のように
絵に描いてみるとビックリするほど小さな部分しか見えない事が分かります。

仮に見かけ視界55度の接眼レンズで見るとすると、だいたい30cm先の
30cmの円盤を見るような形になります。

倍率が300倍なら、直径1mmの範囲を30cmに拡大するというわけです。

直径1mm、長さ30cmのストローを想像していただくとよいのですが、いかに
狭い範囲しか見えないかが分かると思います。

この条件で見えている範囲は月の3分の1ほどで、中央に入れた天の赤道付近の
天体は日周運動でわずか20秒で視野の外に出て行きます。

想像以上に使いづらく、架台などの機械部品も相当頑丈なものでないと使用に
耐えないものになります。

2.射出瞳が小さくなり飛蚊現象がひどくなる

射出瞳(しゃしゅつどう)というのは、望遠鏡を明るい方に向け接眼レンズから
少し離れたところから接眼レンズを見たときに見える白い円のことを言います。

 

望遠鏡から射出される光の束の太さで、

 射出瞳(mm) = 口径(mm) ÷ 倍率
 
という式で計算できます。

次に飛蚊(ひぶん)現象というのは、眼の中(主に水晶体)の不純物が網膜上に
投影されて影ができ、目の前に蚊か飛んでいるか糸くずが浮かんでいるように
見える現象です。

瞳が大きく開いているときはあまり気にならないのですが、直射日光を浴びた
白い紙などを見たときには瞳孔が小さく閉じて、眼に入る光線の束が細くなる
ため、不純物が見えやすくなります。

望遠鏡の倍率が高くなって、射出瞳が小さくなると瞳孔が小さく閉じたのと
同じ効果(それ以上に小さくなる)が起きて、飛蚊現象がとても気になるように
なります。

特に射出瞳が0.7mm以下になると、どうしても避けられないようです。

眼をグルグル回したり、パチクリを繰り返すと一時的に不純物が移動して
視野の中心からズレるのですが、しばらくするとまたスーと動いてきて
イライラさせられることが多いです。

3.気流の影響が大きくなる

私たちの頭の上には常に空気があって、風が流れていたり対流をしていたりし
ます。

この気流の流れによる像の見え具合をシーイングといい、10段階で表します。

倍率が高くなればなるほど、この空気の流れが無視できなくなって、気流の
安定した日でないと高倍率を出しても細かいところが見えないということが
おきます。

100倍くらいまではわりと鮮明に見える日が多いですが、300倍まで上げて
鮮明に見える日というのは意外に少なくて、平均すると一ヶ月に何度も訪れない
と思っていたほうがよいです。

いかがでしょう・・・

仮に過剰倍率に耐える出来の良い望遠鏡に出会えたとしても、その先には
こんな三重苦が待ち受けているというわけです。

倍率って、ある意味麻薬みたいなもので「過剰倍率はダメ」といわれても、
どうしても自分の望遠鏡がどこまでの倍率に耐えるのか試して見たくなる
ものです。

もちろん初めから「500倍!」などと倍率を売り物にした望遠鏡を購入する
なんていうのは論外ですが、これまでお話したような正しい知識を持った上で
あえて試そうというのであれば(私は)OKだと思います。

先日紹介した焦点距離2mmの接眼レンズは実はこの目的のために用意した
ものなんですね・・・

スタパオーナー について

たくさんのかたに星空の美しさ、楽しさを知って頂きたくて、天体観測のできるペンションを開業しました。
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