GW中盤戦、ようやく青空が広がりました。
夜は5夜ぶりに満天の星空を見ることができました。
さて今日も望遠鏡入門シリーズです。(この忙しい時期に何やってんだか・・・といった感じですが・・・・・)
第一章 概論
1-3.望遠鏡の性能を示す数値
市販される望遠鏡には粗悪品と言えるれべるのものが多いのですが、ある程度まともな製品には必ず下の写真のように対物レンズの口径(D)と焦点距離(F)が表示されています。
望遠鏡の性能を示す上でもっとも基本的な数値だからです。
ここでは口径と焦点距離およびそれらにまつわる数値について簡単に説明します。
1-3-1. 口径
望遠鏡の性能を示す数値としてもっとも重要なのが光を集める対物レンズの直径です。
通常レンズは円形であるため、直径を示せば光を集めるための有効な面積が分かります。
レンズそのものの大きさではなく実際に光を集めるのに有効な直径であるため「有効径」と表現されることもあります。
望遠鏡の場合、遠くの暗い天体をいかによく見るかというのが大事ですから口径が大きいほどたくさん光を集めることができ、好都合です。
また理論的には口径が大きくなるほど解像度も高くなります。
レンズ(や反射鏡)に入る光は曲げられて焦点面に像を作るのですが、レンズの外周部の縁を通過する光は、うまく曲げられず回折という現象により散乱されてしまいます。
口径が大きくなるほどレンズの面積に対する円周の長さの比率が小さくなり、回折による散乱も比率が小さくなるので解像度が高くなるのです。
つまり口径が大きいほど光を集める力(=「集光力」といいます)が大きいですし、解像度(=「分解能」といいます)も高くなるので、望遠鏡としての性能が高くなるのです。
集光力は通常、人間の眼の集光力の何倍になるかという数値で表現されます。
人間の眼の瞳孔は暗闇になると最大7ミリの直径まで開くと言われていますので、望遠鏡の口径の面積との比が集光力になります。
集光力(倍) = (口径(mm)×口径(mm)) ÷ (7mm×7mm)
例えば口径70mmの望遠鏡なら
(70×70) ÷ (7×7) = 100 (倍)
となり、肉眼の100倍の集光力があることになります。
次に分解能ですが、理論的にいろいろ難しい計算式もあるのですが、一般的には近接した二重星をどこまで細かく分離して見ることができるかという、「ドーズの限界」と呼ばれる実験式で求められる値を用います。
ドーズの限界による分解能は下式で求めることができます。
分解能( ″) = 115.8″÷ 口径(mm)
例えば口径70mmでは1.65″、100mmでは1.16″という値が簡単に求められます。
(ここで1″は1度の1/3600の角度です。)
集光力も分解能も口径で一義的に決まる性能です。
実際の製品では実力が異なることもあるのですが、カタログ上では上の計算式による数値が示されるのが一般的です。
1-3-2. 焦点距離
対物レンズは焦点面に実像を作るのですが、無限遠から来る光が焦点を作るレンズからの長さを焦点距離と呼んでいます。
面白いことに対物レンズが作る像の大きさは焦点距離の長さに比例します。
それでは次に実際にレンズで像を作ってみます。
上の写真はちょっと見ソフトクリームのようですが、天井に付いている照明(電球形蛍光ランプ)です。
これをレンズを通して床に置いた白い紙に像を投影させてみます。
少し小さいですがきれいにソフトクリーム・・いえ電球の形が映し出されているのが分かります。
次にレンズ口径が同じで焦点距離が約2倍のレンズで像を作ってみます。
さきほどの2倍くらいの大きさの像ができているのがわかります。
でもちょっと薄い(暗い)のがわかりますか?
口径が同じなら集める光の量は同じなので、像が大きく(焦点距離が長く)なれば像の明るさは暗くなります。
口径が同じで、焦点距離が2倍になると、像の大きさも2倍になりますが、像の面積は4倍になりますので明るさは4分の1になってしまうわけです。
カメラの望遠レンズは遠くの物を大きく撮りたいので、焦点距離の長いレンズを使うというわけです。
できるだけ大きなレンズを使ったほうが明るいので写真が暗い被写体が撮りやすいですが、あまり大きくすると持ち歩くことができないので、機動性重視か、画質重視かなどのバランスを考慮して口径比(=口径÷焦点距離)が設定されています。
望遠鏡も焦点距離が長い方が高倍率が出しやすいですが、倍率を高くしすぎれば暗くて却ってよく見えなくなることがありますので、口径に見合った倍率が推奨されています。(この辺はいずれ詳しく解説します。)
1-3-3. 倍率
望遠鏡の性能は原理的に口径で決まるのですが、望遠鏡に詳しくない方は倍率が高いほど性能が高い望遠鏡だと思っていることが多いです。
前節で説明したように望遠鏡は対物レンズで作られた実像を虫眼鏡(接眼レンズ)で拡大して見るものですから、虫眼鏡(接眼レンズ)の倍率が高いものを用いるほど高い倍率になることがわかると思います。
また焦点距離が長くなれば実像のサイズも大きくなるので、対物レンズの焦点距離が長くなるほど同じ接眼レンズでも倍率が高くなります。
倍率の計算はかなり単純で対物レンズの焦点距離と接眼レンズの焦点距離の比で決まります。
倍率 = 対物レンズの焦点距離 ÷ 接眼レンズの焦点距離
例えば対物レンズの焦点距離が1000mm、接眼レンズの焦点距離が10mmだとすると
1000 ÷ 10 = 100倍
ということになります。
もしも接眼レンズの焦点距離が1mmのものを使えば1000倍の倍率が得られるのですが、小さな望遠鏡でそんな過剰な倍率を出しても暗くて、ボケボケで何を見ているのかさえ分からなくなりかねません。
通常は口径(mm)の2倍が有効最大倍率と言われ、これ以上の倍率を出しても暗くなるばかりで新しく細かいものが見えてこないです。
最近は少なくなって来ましたが、まだ巷では何百倍と言った倍率を謳い文句にした素人だましの詐欺望遠鏡をときおり見かけますので、くれぐれもご注意下さい。