GWも後半戦、晴れてはいるのですが今ひとつハッキリしない青空のスタパ周辺です。
新月期ということもあり、濃~いリピーターさまでいっぱいのスタパです。
さて今日も望遠鏡入門シリーズです。
今日は「天体」望遠鏡と「地上」望遠鏡の違いについて説明します。
第一章 概論
1-4. 天体望遠鏡と地上望遠鏡
1-4-1.光学系の違い
天体望遠鏡も地上望遠鏡も望遠鏡であることに違いはありません。
ただし1-2節で解説しましたが、対物レンズが作る実像は原理的に倒立した逆さまの状態で作られます。
これを虫眼鏡(接眼レンズ)で拡大して見るだけなので、接眼レンズの中に見える景色は逆さまのままです。
地上の風景を眺めるときに逆さまに見えるのはとても都合が悪いです。
このため地上を眺めることを前提とした望遠鏡(例えば双眼鏡やフィールドスコープ)には正立した像を見るための仕掛けがしてあります。
下の写真は双眼鏡を分解し、対物レンズと接眼レンズを外した状態で中を覗かせた状態です。
覗かせた円の内部が逆さまになっているのがわかると思います。
この双眼鏡の中には直角プリズムが2個直交するように配置されています。
上図のように光を4回反射させることにより像を倒立させるようになっています。
地上望遠鏡の場合正立像であることが必須ですが、天体望遠鏡として困るのは、正立像を作るために4回の反射が行われると言うことです。
対物レンズで集められた光は反射をする度に暗くなり、プリズムの精度にもよりますが像のボケもドンドン増幅されて行きます。
例えばプリズム各面の反射率が95%だったとしても4回反射すれば・・・
(0.95×0.95×0.95×0.95=0.815)となり2割近くも光が弱まってしまうわけです。
地上望遠鏡は昼間の明るい環境で使うことが多いのと、天体望遠鏡ほどの高倍率(100倍以上)を用いることはほとんど無いので、それほど像の劣化は問題になりません。
一方、天体望遠鏡はいかにたくさん光を集めて暗い星を見るか、いかに高倍率でも解像度の高い像を得るかというのが使命ですから、余計な部品を組み込まずに使うというのが基本になるのです。
宇宙には上も下も右も左もありませんので、逆さまに見えていてもそれほど困らないということもあるので、それほど正立像の必要性を感じないのです。
天頂付近を楽な姿勢で観察するために1回だけ光を反射させて光路を90度曲げる天頂ミラー(天頂プリズム)といった部品は像の減光も劣化もわずかなため用いられることが多いです。
天体望遠鏡用にも様々なタイプの地上観察用の正立プリズムが販売されています。
高倍率用にはあまりお奨めしないのですが、昼間に低倍率で使う分には充分使えますので、天体望遠鏡があればバードウォッチング用に高価な地上望遠鏡を購入しなくても良いです。
余談ですが、逆さまに見える望遠鏡を、もう1台の低倍率の望遠鏡でのぞき込めば正立像になります。
冗談のようですが、少し昔は大まじめにこういった光学系の地上望遠鏡がありました。
レンズが多くて暗くてボケが大きいため最近ではあまりはやらないようです。
1-4-2.架台の違い
双眼鏡のように手持ちで使う望遠鏡は別として、15倍以上になると三脚などのシッカリした架台に載せて使うことが必要になります。
地上望遠鏡では比較的低倍率(20~30倍程度)で使われることが多いですし、上下・水平方向に動いてくれればよいので、カメラ三脚程度でも充分実用になります。
一方、天体望遠鏡は倍率が高いことが多いので、強度の高い台に乗せる必要がありますし、微動装置と呼ばれるほんの少しずつ望遠鏡の向きを変える機構が付いていることや、天頂付近でも観察ができるような構造が必要です。
こういった望遠鏡を載せる台のことを「架台」といいますが上の写真のように上下・水平方向に回転させる軸を持つ架台を「経緯台」と呼んでいます。
微動装置の付いている経緯台でも天体を高倍率で長時間観察する場合や、天体写真を撮るためにはあまり向いていません。
星の動き(日周運動)を追尾させるのには「赤道儀」と呼ばれる方式の架台を使用することが多いです。
架台の方式などについては別項で詳しく説明しますが、ここでは地上望遠鏡とは異なる世界があることを知っておいて下さい。